見習い樹木医の日々是勉強

樹木に発生する病害虫を診断できるよう、日々勉強しています。

クスノキの葉が薄い緑色になり少し膨らんで・・・(ビロード病)

7月の下旬、クスノキの葉表が、薄い緑色がマダラに混じった色になっているのをみつけました(下写真)。

薄い緑色がマダラに混じったクスノキの葉表

葉を採取し、薄い緑色部の裏を観察すると褐色の絨毯状物で覆われていました(下写真)。

葉裏に発生した褐色の絨毯状物

これは "ビロード病" です。

 

この記事の詳細は、下記の記事をご覧ください。

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ビロード病の詳細については、下記の記事をご参照ください。

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ミカンハモグリガ(通称:エカキムシ)

今回はミカンハモグリガについて勉強します。

 

名前:ミカンハモグリガ(Phyllocnistis citrella (Stainton))

分類:チョウ目コハモグリガ科

加害樹種:モモ、ミカン、ナシ、リンゴ、レモン、など

成虫:開張時幅5~6mm、体長3mm程度。銀白色の鱗粉に覆われ、翅に淡褐色の条紋や先端に大型の紋がある。

幼虫:幼虫は淡黄白色半透明、扁平で老熟すると体長4mm程になる。

生活史:成虫が葉の表面に1個ずつ産卵(直径:0.3mm程度)。孵化した幼虫はすぐに葉に孔をあけて組織内に食入する。侵入した幼虫はトンネルを掘るように食い進み、葉の中で蛹化・孵化する。成虫の状態で樹幹の粗皮のすき間や葉裏で越冬する。1年間の発生回数は5〜10回程度

被害の特徴:新葉の表皮と裏皮の間に侵入して葉肉を摂食するので、その部分は白く見える。食害痕は曲がりくねった細長い線状になる。食害痕に排出される糞が黒く透けて見えることもある。被害が激しくなると、葉が歪んで奇形になる。若枝や果実を食害することもある。

物理的駆除:新葉の展開時期、被害の発生状況を注意深く観察し、見つけ次第幼虫を押しつぶす。

化学的防除:被害の発生初期に殺虫剤を樹全体に散布する。使用できる殺虫剤としては、

  • ベルメトリン乳剤
  • エトフェンプロックス乳
  • クロチアニジン水溶
  • エトフェンプロックス乳
  • ジノテフラン液剤

など、多数あります。

ミカンハモグリガの被害を受けやすい柑橘類では果実を食しますので、使用する殺虫剤や時期に十分注意し、できるだけ農薬を使用しない防除に心がけましょう。

 

下記の関連記事もご覧下さい。

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レモンの葉に白い線が・・・(ミカンハモグリガ)

庭で育てているレモンの葉に白っぽい線をみつけました。

 

<症状と診断結果>

下の写真のように、レモンの新葉に曲がりくねった白色の線模様ができていました(6月中旬)。

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線状の模様は葉の両面にありました。
上は葉表、下は葉裏の様子です。

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線の先を探して観察すると・・・、いました葉の中に。これが犯人ですね。

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アップで撮影したい写真が下です。

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表面の薄い皮を剥ぐと、中から綺麗な緑色の幼虫が現れました。

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アップにしたのが下の写真です。

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犯人はミカンハモグリガ。通称エカキムシとも呼ばれています。

今回は葉表に1匹、葉裏に1匹いました。

1枚目と3枚目の写真に見られる黒い筋はこの幼虫が排出した糞です。

 

<被害の特徴>

ミカンハモグリガによる被害の特徴は以下のとおり。

  • 本種は年5〜7回発生する
  • 7〜9月の新葉が展開する時期に被害が目立つ
  • 幼虫が葉の中に潜り、葉表と葉裏を残して、葉肉を食べる
  • 食害部は半透明の線になり、葉の生育が妨げられる
  • 新葉のほか、新梢や果実にも被害は発生する
  • 被害を受けた葉にコナカイガラムシが発生することがある
  • 食害部分からかいよう病が侵入することもある

 

<防除方法>

防除方法としては

  • 見つけ次第、線の先端部分にいる幼虫を指で潰す
  • 幼虫の発生初期に殺虫剤を樹全体に散布する

などがあります。

使用できる殺虫剤としては

  • ベルメトリン乳剤
  • エトフェンプロックス乳
  • クロチアニジン水溶
  • エトフェンプロックス乳
  • ジノテフラン液剤

など、多数あります。

レモンは果実を食しますので、使用時期に十分注意して使用し、できるだけ農薬を使用しない防除に心がけましょう。

 

ミカンハモグリガの詳細については下記の記事もご参考にしてください。

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さび病

今日はさび病について勉強します。

 

症状:いろいろな広葉樹の葉の裏やマツ類などの針葉に、橙黄色・黄褐色・赤褐色・黒褐色などさまざまな色調の粉状物(夏胞子堆)、表面が平滑ないぼ状の塊、粉が詰まった嚢状物(さび胞子堆)、房状の突出物、などが多数現れる。激しく発生した場合には早期に落葉することが多い。秋には葉の表面又は組織内に色の濃い、越冬用の冬胞子が形成される場合が多い。症状は枝部にも発生し、患部が肥大して奇形となったり、てんぐ巣症状になる場合もある。

 

病原菌:担子菌類の仲間であるサビキン類に属し、非常に多くの樹種に発生する。通常、広葉樹や針葉樹の葉身に発生するが、特に針葉樹の葉身に発生するものを葉さび病と読んでいる。さび病菌は生きた植物にしか寄生できない活物寄生菌で、生活環によって2通りに分かれる。一つは同一宿主植物体上で寄生を繰り返す菌、もう一つは2種の宿主間を移動して寄生する菌(異種寄生菌)。前者に侵される植物としてはイチジク、ブドウ、モモなどが、後者に侵される植物としてはナシ(赤星病)とビャクシン、アカマツ(葉さび病)とキハダなどがある。

 

 伝染環:同一宿主植物体上で寄生を繰り返す菌は、同一の植物に夏胞子をつくり、気温が低下するとそこに冬胞子をつくって越冬し、翌年、それが第一次伝染源となって病気を発生させて夏胞子をつくる。2種の宿主間を移動して寄生する菌(異種寄生菌)は、冬に一方の宿主に寄生し、春になるとそこに冬胞子をつくり、冬胞子の発芽で形成される担子胞子を飛散させ、それがもう一方の宿主に付着して発病する。その後、その病斑上に銹子腔をつくり、その中のさび胞子が飛散して再び元の宿主に付着寄生する。

 

発生環境:湿度が高いところで発生しやすい。

 

発生しやすい樹種さび病:マツ類、サクラ類、ビャクシン、イチジク、ブドウ、バラなど。赤星病:カイドウ、ナシ、リンゴ、カリン、ボケなど。

 

防除法:患部は早めに摘み取り、焼却して、伝染源を少なくする。降雨で発生が多くなるので、密植をさけ、枝葉が過繁茂にならないように管理する。薬剤を使用する場合、被害が激しくなってからの防除は困難なので、発生初期の防除に努める。薬剤の散布は、各世代の胞子が飛び散る時期に、1週間から10日おきに散布する。また、2種の宿主間を移動して寄生する菌(異種寄生菌)場合には、2種の宿主のうちいずれか一方を取り除けば病原菌の伝染環が断たれるので防除できる。

 

薬剤:ヘキサコナゾール水和剤、クレソキシムメチル水和剤、石灰硫黄合剤、メプロニル水和剤、マンネブ水和剤、キャプタン水和剤、イミベンコナゾール水和剤、マンゼブ水和剤、チウラム水和剤、銅水和剤など。ただし、これらの薬剤は個別の数種類にのみ登録されているので、実際に使用する際は登録の有無を確認すること。

 

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ヤマナシの葉に黄色の斑点が・・・(赤星病)

近くの公園に植わっているヤマナシの葉に黄色い斑点が多数発生していました。

 

<症状と診断結果>

4月の中旬、ヤマナシの葉に複数の黄色い斑点を見つけました。

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下は変色部をアップにした写真です。

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黄色い丸いものがたくさん。何かの卵? 菌のようにも見えますが・・・。

被害葉を濡れティッシュと一緒にチャック付きのビニール袋に入れてしばらく放置した後の変色部を撮影したのが下の写真(5月初旬)。

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ゼリー状になっていました・・・。

下は、5月下旬の写真です。変色部がしっかりしてきて葉の裏側に少し凹んでいます。

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葉の裏側を見ると、房状のものができていました。

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黄色く変色したところの裏側にいくつもできています。

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(上の写真)右上はゼリー状ですね。

さらに、6月初旬、変色して落ちている葉が何枚もありました。

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落葉の裏側を観察すると、ありました、房状物。接写したのが下の写真です。

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さび病ですね。

ナシに発生するのは赤星病です。

ナシに発生する赤星病の生活環は下記のように複雑です。

  • 冬はビャクシンに寄生
  • 春になると冬胞子堆をつくり、そこに形成された担子胞子が飛散
  • 飛散した担子胞子がナシの葉に付着し、赤星病が発生
  • その病斑上にさび子腔をつくり、その中のさび胞子が飛散
  • 飛散したさび胞子がビャクシンに付着。寄生して冬を越す

さび子腔というのが、5、6、8枚目の写真でしょうか?

この病害の発生には、近くにビャクシンが生育している必要があります。

探してみると・・・。ありました!

そして葉の先に下の写真のようなものが、見つかりました。

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ビャクシンのさび病(ナシの赤星病)に関係のあるものなのかな?

しばらく観察することにします。

 

<防除方法>

ナシ赤星病の防除方法としては

  • 発生初期に被害葉を摘み取り、焼却する
  • 各世代の胞子が飛散する時期に殺菌剤を散布する
  • 中間宿主であるビャクシンを取り除く
  • 枝葉が過密にならないよう管理する

などがあります。

 

今回使用できる殺菌剤は

  • キャプタン水和剤
  • マンネブ水和剤
  • メプロニル水和剤
  • トリフルミゾール水和剤
  • マンゼブ水和剤

などが登録されています(令和3年6月6日時点)。

 

 

さび病については、下記の記事もご参照下さい。

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ヤノナミガタチビタマムシ

今回はヤノナミガタチビタマムシについて勉強します。

 

名前:ヤノナミガタチビタマムシTrachys yanoi Y.Kurosawa)

分類:コウチュウ目タマムシ

加害樹種ケヤキ、ムクノキ

成虫:体長2.6〜4.2mm、短大で卵形、上翅は褐色の短毛で覆われ、その中に3本の明確な波形をした銀白色の横帯がある。

幼虫:老熟幼虫は体長約8.2mm程度、体は細長く、黄緑色でやや光沢があり、頭・胸は扁平で脚を欠く。

生活史:年1回の発生。成虫は10月に入ると剥がれかかったような樹皮下や落葉下などに潜り、その中で越冬する。新芽の活動開始期から新葉の展開時期、成虫は越冬場所を飛び出して若葉を摂食する。5月上旬ごろから交尾、産卵行動に入り、1葉に1〜数個ずつ、葉肉内に1粒ずつ産卵する。卵の期間は1週間から10日前後。孵化幼虫は卵と葉の接着面から潜入して葉肉を摂食する。老熟幼虫は落ちた葉または樹上の葉内で蛹化後、約10日間で羽化し、葉から脱出(7月下旬から)する。新成虫は葉を網目状に摂食し、被害葉は葉脈を残して網目状となる。

被害の特徴:幼虫および成虫がケヤキ・ムクノキの葉を長期間食害する。幼虫は葉肉内にもぐって摂食する。摂食された葉は夏に赤く変色し、その後落葉する。接触された部分は袋状に空洞になり、その葉を透かすと内部にいる虫が透けて見える。成虫は開葉期と夏〜秋の2回、葉脈を残して葉を摂食するので、摂食された葉は網目状になる。

物理的防除:幼虫の入った被害(落)葉を集めて焼却する。秋期、樹幹にこもを巻き、越冬幼虫を捕殺する。成虫は葉上によく見られるので、見つけ次第捕殺する。巨樹での防除は困難だが、ケヤキは強健なので少々の被害で枯死することはない。

 

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ケヤキの葉がかじられて…(ヤノナミガタチビタマムシ?)

 近所の公園に立っているケヤキの葉がかじられていました。

 

<症状と診断結果>

写真のようにケヤキの葉がかじられているのを見つけました。

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さらに、葉の上に小さな甲虫(体長2mm程度)を見つけました。

アップにして撮影したのが下の写真です。

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この甲虫、たぶん、ヤノナミガタチビタマムシだと思います。

 

ヤノナミガタチビタマムシの成虫と幼虫はいずれもケヤキの葉を食害します。

成虫の特徴は、

  • 体長2.6〜4.2mm
  • 体形は短大で卵形
  • 上翅は褐色の短毛で覆われ、その中に3本の波形銀白色の横帯がある

です。間違いなさそうですね。

 

ヤノナミガタチビタマム成虫による被害の特徴としては、

  • 開葉期と夏〜秋の2回、葉脈を残して葉を摂食
  • 摂食された葉は網目状になる

が挙げられています。

 

でも、今回の症状食害痕、網目状ではないように見えます(一番上の写真)。

実は、葉の裏側に体長2cm程度の緑色のサナギが付いていました。

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もしかして葉をかじった犯人はこの虫かも?

 

 

このサナギ、駆除せずに羽化するのを待ってみようと思います。

うまく羽化し、虫の名前がわかってから診断し直しです。

 

ヤノナミガタチビタマムシについては下記の記事をご覧下さい。

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